コーヒー豆の基本と産地ごとの大まかな特徴

コーヒーの実

一口にコーヒー豆といっても品種や産地、名称などさまざまな違いがあります。

この記事ではコーヒー豆の基本と産地ごとの特徴について簡単に書いていきたいと思います。

コーヒーの三大品種

コーヒー豆の原産地はエチオピアといわれており、ブラジルやコロンビア、コスタリカといった中南米、エチオピアやタンザニア、ケニアなどのアフリカ諸国、ハワイやインドネシアなどで栽培されています。

コーヒー豆の一番大きな違いは品種の違いで、現在飲まれている品種はアラビカ種、カネフォーラ種ロブスタ(一般にはロブスタ種といわれる)、リベリカ種の3種です。

アラビカ種

アラビカ種はアカネ科の植物であり、エチオピアのアムハル高原に起源をもちます。

三大品種の中でもっとも多く栽培(全体の7~8割)されており、風味、香りともにロブスタ種やリベリカ種に比べて優れているといわれています。

アラビカ種の中にもさらに多くの品種に分かれており、カトゥアイ、カトゥラ、コムン、ティピカ、ブルボン、マラゴジペロ、ムンドノーボなどが栽培されています。

ロブスタ種

ロブスタ種は1898年にベルギーのエミール・ローレンがアフリカのコンゴで発見しました。

ロブスタの語源は英語で「剛健な」「丈夫な」という意味の”robust”に由来するといわれています。

語源通り病虫害に強い点、低地での栽培にも適している点、環境適応力が高い点などが魅力です。

独特な苦味と香りを持つことから、ストレートよりもブレンドに多く使われています。

発見者の名前にちなんで「コヒア・ローレンティ」、発見地にちなんで「ワイルド・コンゴ・コーヒー」とも呼ばれています。

現在ではコーヒー全生産量の約2~3割を占めており、インドネシア(生産量全体の9割)やウガンダ、マダガスカル、アンゴラなどのアフリカ諸国、フィリピン、インド、ベトナム、ブラジルなどでも盛んに栽培されています。

リベリカ種

西アフリカのリベリア原産の品種です。

コーヒー三大品種のひとつに数えられますが、消費量は他の品種よりも圧倒的に少なく、世界全体の流通量の1%にも満ちません。

環境順応性(気温や湿度など)は高いですが、病害に弱く、味も劣るため、マレーシアやフィリピンなどの低地の一部で栽培されている程度です。

飲用として消費されることはほとんどなく、研究用や交配用の種として利用されています。

コーヒー豆の産地ごとの特徴

世界地図

ブラジル・サントス、コロンビア・スプレモ、グアテマラ・アンティグア、ハワイ・コナなど同じコーヒー豆でもいろいろな名前がついています。

名前のつけかたは以下の3種類プラス格付け(等級)で決まるといわれています。

1.生産国の名称

2.出荷する港の名称

3.生産地域の名称

例えばグアテマラ・アンティグアなら「グアテマラ」という国の「アンティグア」という地域で作られているコーヒー豆、ケニアAAなら「ケニア」という国の「AA」という等級のコーヒー豆ということになります。

ブラジル

ブラジルは世界のコーヒー豆生産量の約3割を占める世界第一位のコーヒー生産国です。

非常に質のよいコーヒー豆を安定して生産しており、キャラメラード、モンテアレグレ、ファゼンダなど、数多くのスペシャルティコーヒーがあります。

スペシャルティコーヒーとはコーヒー生産国において、栽培の管理や収穫、生産処理、選別などの品質管理が高いレベルで行われており、欠点豆の混入も極めて少ない生豆のこと。コーヒー豆全体のわずか数%。

サントスNo.2

ブラジル産のコーヒーは「ブラジル」と一般に呼ばれますが、さらにサントス港から輸出されているものを「サントス・コーヒー」と呼びます。

サントス・コーヒーの格付けはNo.2~No.8で、No.2が最高ランクとなっています。

苦味、酸味ともにバランスよく、ストレートでもブレンドにいれても美味しいコーヒーです。

ブルボン・サントス

ブラジルで生産されているアラビカ種はムンドノーボとカトゥアイが2大品種といわれていますが、かつてはこのブルボン種が多く栽培されていました。

ブラジルのコーヒー豆の中ではやや小粒で丸みを帯びた形が特徴で、伝統的なコーヒーとして人気があります。

ブラジル・ピーベリー

通常2つの種子が平らな面を向かい合わせてはいっていますが、稀に存在する果実に1つしか入っていなかった種子のことをピーベリーといいます(形が丸いので「丸豆」とも)。

コーヒー豆全体の中で10%程度しかとれない希少価値のある豆です(味は通常の豆と変わりません)。

ブラジルの他ではジャマイカなどがピーベリーを供給している国として有名です。

カフェ・ジーニョ
深煎りの濃いコーヒーに砂糖をたっぷり入れて飲むブラジルの一般的な飲み方。

コロンビア

国土の大半が山岳高原地帯であるコロンビアは、地質、気候ともにコーヒー栽培に非常に適しており、世界第3位のコーヒー生産量を誇ります。

コロンビアのコーヒー豆は成熟した果実だけを丁寧に手摘みし選別するという徹底した品質管理と水洗式精製が特徴です。

水洗式とは収穫したコーヒーの実を水槽に入れてゴミや未熟豆を除去した後に果肉を除去し、その後再び水洗いなどをして粘液質(ミューシレージ)をきれいにしてから乾燥→生豆にする方法。

コロンビア・スプレモ

コロンビアで生産された豆の中でももっとも大粒のものがスプレモ(スペイン語で「最高級」という意味)に分類されます。不良豆や異物混入が極めて少ないのが特徴です。

ストレートは当然美味しいですが、他の豆との相性がよいため、ブレンドのベースにも良く使われます。

やわらかな甘味としっかりとしたコク、強い酸味と苦味を併せ持つ非常に美味しいコーヒーです。

コロンビア・メデリン

コロンビアの代表的なコーヒー生産地であるメデリン市から名付けられたコーヒーです。

メデリンはコロンビア屈指のコーヒー生産地で、世界的にも高い評価を受けています。

スプレモに比べると香りはややライトですが、酸味や苦味はしっかりしており、バランスの良いコーヒーです。

コロンビア式コーヒー
沸騰させたお湯に黒砂糖を入れて火を止め、コーヒー粉を入れた後フタをして5分待つ。その後、コーヒー粉が沈んだら上澄みだけを飲むコロンビアの飲み方。

グアテマラ

中央アメリカ北部に位置し、マヤ文明の栄えた地として有名なグアテマラ。

豊かな雨量、肥沃な火山土壌、高原の気温など、コーヒーを生産するのに最適な環境で生産されたコーヒー豆は非常に質が高く、世界最高のひとつに数えられます。


グアテマラ・アンティグア

グアテマラ市の西にあるアンティグア地域で生産されるコーヒー豆。

グアテマラのコーヒーは標高別に7段階に分類されていますが、アンティグアは最上級(標高1350m以上)のストリクトリー・ハードビーン(SHB)となります。

苦味はマイルドで少し酸味が強いのが特徴で、ストレートで飲んでも美味しく、ブレンドでも他のコーヒー豆を際立たせる名脇役として非常に優秀です。

グアテマラの経済状況
政府がコーヒーや砂糖、バナナという国際市場価格に依存する不安定な経済を改善すべく加工食品や繊維加工品などを振興し、近年は観光産業の成長も著しい。2010年以降は経済成長率も2~3%で安定的に推移している。

コスタリカ

スペイン語で「豊かな海岸」を意味する国名どおり、コスタリカはカリブ海と太平洋に面しています。

特に太平洋側の山地の斜面で生産されているものは品質が非常に高く、世界的に人気があります。

コーヒーの品種はほぼ100%がアラビカ種。精製方法は水洗式がほとんどで、一部セミウォッシュドを採用しています。

品質・等級の格付けが非常に複雑で、産地と高度、輸出先などによって違ってきます。

セミウォッシュドとはコーヒーを収穫後、パルパー(果肉などを除去する機械)で皮をむき果肉や粘液質(ミューシレージ)を残したまま乾燥させ、最後に脱穀する方法。パルプド・ナチュラルやパルプド・ナチュラル・デスムシラージなどの方法がある。

コスタリカ・カフェ・ボニータ

コスタリカの首都サンホセを中心にした「セントラル」と呼ばれるコーヒーの生産に非常に適した山間盆地で生産されています。

スペイン語で「bonita:美しい、かわいい」という名前にピッタリな香り高く洗練された味が特徴です。

酸味が強く(ツンとした酸味ではなくまろやか)、苦味が抑えられた非常にフレッシュでフルーティーな味わい。

個人的にはブレンドよりも浅煎りに焙煎してストレートで飲みたいコーヒーで、朝食やこってりとした料理を食べた後におすすめです。

コスタリカの経済状況
伝統的にコーヒーやバナナなどの農業を中心とした経済だったが、近年はソフトウェア開発やコールセンターなどのサービス業や観光業、医療器具の開発、生命科学産業などの成長が著しく、年3~5%の安定的な成長を続けている。

ホンジュラス

高温多湿で標高による温度差が激しいホンジュラスはコーヒーの生産に非常に適した国です。

コーヒーの産地は国土の東西にのびる2000m級の山脈沿いに集中しており、栽培品種はほぼアラビカ種、精製方法は8割が水洗式、残り2割が非水洗式。

格付けは標高よって3段階(SHG>HG>CT)。


ホンジュラスSHG

ホンジュラス中部のコマヤグア市、シグアテペッケ市近郊の標高1300m以上の高地(格付けSHG)で生産されています。

一般的なホンジュラスよりも脂質が多く、熟度も高め。

酸味と苦味のバランスが非常によく、全体的にまろやかで甘味さえ感じられる味わいが特徴です。

ホンジュラスの経済状況
コーヒーやバナナなどの伝統産業への依存度が高く、脱却するために建設業やマキラ産業に注力しているが、2009年のクーデター後国内経済は厳しい不況に陥った。日本も有償・無償・技術協力など、2016年度までで1500億円以上の資金援助を行っている。

ケニア

赤道直下に位置するケニアではコーヒーが古くから栽培されており、世界でも有数のコーヒー輸出国です。

栽培品種はアラビカ種でほぼ水洗式。ケニアのコーヒー豆は「ケニアアラビカ」の名前で知られており、優れた酸味が特に西欧諸国で高い人気を誇っています。

味のバランスがとれた上での強い酸味は個性的なコーヒーを好む人にベストマッチします。

酸味を際立たせるために浅煎りで飲んでもよいですが、私はあえて深煎りにし苦味をプラスし飲んでいます。


ケニアAA

主要産地はウガンダ国境からリフトバレー地域、ルイル、キアンブなどの南西部の高原地帯。

サイズや形状、重量によって「PB(ピーベリー)、AA、AB、C」などの7つの等級に格付けされており、AAはその中で最上級です。

ブラックチェリーのような果実香、ナッツのような香ばしい香りが特徴で、キリマンジャロと並んで最も強い酸味をもつといわれています。

ケニアの経済状況
東アフリカ最大のモンバサ港を持ち、東アフリカ諸国の玄関口としてアフリカ諸国の中でも有数の経済発展を遂げている。2015年にはGDP成長率5.6%、2016年には5.8%と安定して成長していたが、2017年の総選挙の混乱や政治的不安定性が経済に悪影響を与えている。

タンザニア

インド洋に面し、アフリカ大陸東部に位置するタンザニアは1000m以上の高原が国土の大半を占めています。

栽培品種はアラビカ種とロブスタ種で精製方式は水洗式。収穫期はアラビカ種が10~2月、ロブスタ種が6~12月です。

北東部にそびえたつのはアフリカ最高峰のキリマンジァロ。その山の斜面で栽培されているのが世界三大コーヒーとして有名なキリマンジァロ・コーヒーです。


キリマンジァロAA

タンザニアのみならずアフリカを代表するといってもよいキリマンジァロAA。口に含んだ瞬間感じる非常に強い酸味が最大の特徴です。

ストレート、ブレンドのどちらでも個性的な味を楽しむことができますが、ブレンドにする場合はコロンビアなどのコクのあるコーヒーと合わせると味に立体感と奥行きがでます。

霊峰キリマンジァロ
キリマンジァロは現地語で「輝く山」を意味する。万年雪を頂いた神々しい姿に対してタンザニアの人々は深い愛着を抱いており、日本の富士山信仰によく似たものを感じまさに霊峰の名にふさわしい。

インドネシア

インドネシアは赤道を中心として大小1万を超える島から構成されているアジア有数の群島国家です。

2016年時点で世界第4位のコーヒー生産量を誇るコーヒー大国。

生産している品種はロブスタ種が中心(約9割)で、アラビカ種はジャワ島やスラウェシ島、スマトラ島などで生産されています。

マンデリンG-1

スマトラ島の北部・北スマトラ州で生産されており、しっかりとした酸味と強い苦味を併せもつ非常に美味しいコーヒーです。

インドネシアではアラビカ種の生産量が少ない上にマンデリンは特に生産量が少ないため、非常に貴重な豆として高値で取引されています。

格付けは欠点豆の混入率によって決まっており、グレード1~6までの6段階に分類されています。

バリコーヒー
インドネシアでは島ごとにコーヒーのいれ方が異なる。有名なバリコーヒーはコップにコーヒー粉と砂糖を入れ、沸騰したお湯を入れてかき混ぜた後数分置いて粉が完全に沈んでから上澄みを飲む。コロンビア式コーヒーに似ている。

さいごに

この記事ではコーヒー豆の基本(品種など)と産地毎の大まかな特徴について書きました。

今回紹介しきれませんでしたが、コーヒーの生産に適した赤道付近にはまだまだたくさんの国があり、素晴らしいコーヒーを生産しています。

喫茶店では「ホット」「アイス」「アメリカン」「ブレンド」などといった抽象的な呼び方をされているコーヒーですが、産地や品種によって味や香りも様々で非常に奥深い飲み物なのです。

もしコーヒー豆の名前を出して販売しているような本格的な喫茶店に行った時には、ストレートで飲んで味や香りの違いを感じてみてください。